【離婚のご相談⑤】年金分割

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離婚件数の8割以上は「協議離婚」となっており、FPのところへは「財産分与」に関する質問をきっかけにご相談にこられる方が多いです。きっかけは「財産分与」ですが、合わせて協議離婚の流れや取り決め項目などの概要もお伝えしております。「年金分割」は時効があることをご存じない方も多く、忘れずにご検討いただきたい項目です。

目次

「年金分割」には時効がある

家庭裁判所で行われる「調停離婚」では、夫婦で取り決めた内容を公文書にて作成されます。
協議離婚では夫婦の話し合いで条件を取り決めることになるため、専門家が入らないと取り決め項目の漏れがあったり、文書化されない場合もあります。
「年金分割」を検討されなかったという方も多く、離婚をした日の翌日から2年を経過すると請求できなくなってしまうので注意が必要です。

「年金分割」とは

年金分割は、離婚した場合に、お二人の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金(旧共済年金も含む)を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。
具体的には、離婚時の年金分割が行われると、婚姻期間中について、厚生年金の支給額の計算の基となる報酬額(標準報酬)の記録が分割されることになり、年金額をお二人で分割できます。
分割方法には、「合意分割」「3号分割」の2種類があります。

法務省HP「年金分割」

3号分割

平成20年5月1日以後に離婚等をし、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割することができる制度です。
また、請求にあたっては、当事者双方の合意は必要ありません。
分割される方が障害厚生年金の受給権者で、この分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合は、3号分割請求は認められません。

  • 年金分割の効果は、厚生年金の報酬比例部分(厚生年金基金が国に代行して支給する部分を含む。)に限られ、国民年金の老齢基礎年金等には影響はありません。
  • 現に老齢厚生年金を受けている場合は、年金分割の請求をした月の翌月分から年金額が変更されます。
  • 分割の対象となるのは、婚姻期間中の記録のみです。
日本年金機構HP 離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)

合意分割

3号分割以外の年金分割となり、夫婦の双方とも厚生年金に加入していたとき、又は、平成20年3月以前の婚姻期間を分割の対象とするときに利用されます。
合意分割は、平成19年4月1日に開始された制度です。
ただし、夫婦の合意に基づいて平成19年3月以前の期間も分割することができます。
合意分割は夫婦間の合意に基づいて分割割合を定めることができます(分割される側の半分を限度とする)
※3号分割では分割割合は半分ずつに固定されています。

日本年金機構HP 離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)

年金分割のための情報通知書

分割の対象となる期間や金額などの情報を正確に把握するため、年金事務所にを請求することができます。

  • 「情報通知書」の請求は、期限内に行う必要があります
  • 情報通知書の請求は、離婚の前でも後でも行うことができます
  • 公証役場で年金分割の合意に関する手続きをする際に、「情報通知書」を提示が必要です
  • 「情報通知書」は即日交付されない場合が多く早いうちに請求する必要があります

年金分割の請求

分割の請求は、離婚をした後に行うことができます。
年金事務所にて「標準報酬改定請求書」と添付書類を提出します。

添付書類
  1. 基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類
  2. 婚姻期間等を明らかにすることができる書類
  3. 請求日前1カ月以内に交付されたお二人の生存を証明できる書類
  4. 合意分割の場合は、年金分割の割合を明らかにすることができる書類
  5. 離婚の届出をしていないが事実上離婚状態にあることを理由に3号分割を請求する場合は、離婚の届出をしていないが事実上離婚したと同様の事情にあることを明らかにすることができる書類

元夫婦二人が離婚後に年金事務所に出向いて、必要な手続きを行ないます。
準備しておく書類や年金事務所に出向く日時などは、事前に年金事務所へ確認して進めておくのがベストです。

FP相談の現場から

3号分割のみ請求する場合は、夫婦の合意なしに第3号被保険者であった方からだけで手続きが可能です。しかし、平成20年4月1日以後の婚姻期間中のみになるため、3号分割をしても婚姻期間の割にはもらえる年金額が少ない可能性があります。
早く離婚したい気持ちが勝るため3号分割のみで済ませてしまう方もいらっしゃいますが、まずは「情報通知書」を取り金額を確認してから考えることをおすすめします。

この記事を書いた人

FPあちこのアバター FPあちこ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

浜松市の独立系ファイナンシャルプランナー

保険や投資信託などの金融商品の販売はしないコンサル専業FPです。
住宅購入の際、長年税理士事務所に勤めていながら知識がないことにショックを受ける。
そんな時にFP資格に出会い、もっと知りたい!と思っているうちに独立系FPになっていました。
税理士事務所・行政書士事務所・保険代理店・金融機関での実務経験を活かした実践的コンサルをしています。

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