【離婚のご相談①】まずはどうしたらいいの?

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結婚した3組に1組が離婚しているという統計(下図)もありますが、離婚のご相談も多くあります。
FPのところへは「財産分与」に関する質問をきっかけにご相談にこられる方が多いです。きっかけは「財産分与」ですが、合わせて離婚の流れや取り決め項目などの概要をお伝えすることになります。
成人前のお子さんの有無や住宅ローンの有無などによって流れや項目が大きく変わります。今回は離婚の大まかな概要を解説します。

結婚・離婚する年齢を80歳まで(男性18~80歳、女性16~80歳)と設定し、年齢別婚姻率・離婚率で1人の男または女が一生の間に結婚・離婚をするとしたときの回数(①②)
③結婚に対する離婚の割合。およそ結婚した3組に1組が離婚していることになる。

目次

離婚の方法

離婚の合意ができないと、① → ③へと手続が移っていきます。

  1. 「協議離婚」当事者の協議による合意の上、離婚届を市町村長に届け出る
  2. 「調停離婚」家庭裁判所の調停手続により調停を成立させる
  3. 「裁判離婚」離婚しようとする者が離婚の訴えを家庭裁判所に提起し確定判決を得る
日本公証人連合会 「離婚」より

離婚の8割以上が協議離婚となっています(下表)

裁判離婚の内訳は下表のとおりで調停離婚がほとんどです。

ここでは「協議離婚」について概要を解説します。

離婚に関する取り決め

トラブル防止のためにも、離婚するにあたって取り決めをしたい項目です。

  • 親権者と監護権者の定め
  • 子供の養育費
  • 子供との面会交流
  • 離婚慰謝料
  • 離婚による財産分与
  • 年金分割

※監護権者・・・子の監護養育をする者で、親権と分離して別に監護者を定めない限り、親権者が当然監護養育すべきことになります。

取り決めたことを文書化する

家庭裁判所で行われる「調停離婚」では、夫婦で取り決めた内容を公文書にて作成されます。
協議離婚では、夫婦で取り決めた内容が自動的に公文書とならないため、文書化する必要があります。

協議離婚で作成される契約書は2種類あります。

  1. 通常の契約書
    • 離婚協議書、合意書、離婚に伴う契約書、協議離婚合意書、離婚給付契約書などの名称で言われる。
  2. 公正証書

通常の契約書(離婚協議書や合意書など)と公正証書は、どちらも法的に有効な文書ですが作成前後にわたって違いがあります。

公正証書離婚協議書や合意書
お金の支払の
不履行の場合
強制執行が可能裁判を起こす必要あり
作成場所公証人役場夫婦の話合いによれば自由。
弁護士、司法書士、行政書士など
の専門家に文書化の依頼することも可能。
費用政府が定めた「公証人手数料令」という政令による専門家ごと個別の料金(報酬)

離婚協議書を公正証書で作成した場合、お金の支払い契約が守られなかったときに、強制執行(財産の差し押さえ)が可能になります。

公証人が作成しない離婚協議書も、通常の契約書として法的効力を備えます。
ただし、離婚協議書は公正証書と違い、お金の支払い契約が守られなかったときに、債権者は裁判を経なければ「強制執行」を行うことができません。

強制執行が容易でない債務者(例えば自営業者など)や、お金の支払いの遅延の心配が低い高所得者の場合、すぐに離婚の届け出をしたい時などは公正証書でなく離婚協議書で済ませるケースもあります。
離婚届提出後に公正証書を作成することを事前に離婚協議書で合意しておき、離婚後に公正証書を作成することもできます。

社会保険事務所や金融機関に、年金分割や住宅ローンなどの取り決めを認めてもらうには文書化しなくてはいけません。
公正証書または離婚協議書を作成する必要があります。

住宅ローンの債務者変更などの手続きを行なう際、金融機関からは「審査するために離婚協議書の提出」を求められることがままあります。
公正証書で作成すると時間がかかり、審査が通らなかった際の再協議で内容の変更をする場合に労力がかかるので、離婚協議書を作成して対応するケースが多いです。
当事者同士だけで交わした離婚協議書ではNGとされ、公証人役場での「私文書の認証」を求められることがほとんどです。

強制執行とは

支払う義務のある人の財産を差し押さえて、強制的に支払いをしてもらうことです。
強制執行の対象にできるのは「決まった額のお金を支払う契約」だけです。
住宅、自動車などを引渡す契約は強制執行の対象になりません。
強制執行を念頭において公正証書を作成する場合は、支払金額、支払期日などを明確にしておかなければなりません。「月給の〇%を毎月支払う」という契約は強制執行の対象になりません。

公証役場は夫婦間の調整は行わない

公証役場は、家庭裁判所ではないので夫婦意見の調整や仲裁などはおこないません。
公証役場は、夫婦で合意した離婚条件を公正証書で作成する場所になります。
揉めている場合は、家庭裁判所か弁護士に依頼するようにしましょう。
揉めてはいないけれど、離婚の取り決め事項や流れについて専門家のアドバイスを得ながら進めたい場合は、司法書士や行政書士に頼むことができます。

自宅を売却しようとしている!

離婚の協議をしている最中に、自分名義(または共有)である自宅(または持分)を売却して換金しようとする人もいます。実行されてしまうと住宅ローンの変更や財産分与の手続きすらできなくなってしまいます。
離婚前に配偶者が財産を処分することを防ぐには、できるだけ早く法的な手続きをとる必要があります。
「財産分与請求権」に基づき、裁判所等に離婚前に財産の処分をさせないことを求めることができます。

  1. 民事保全手続・・「処分禁止の仮処分命令」の申立。離婚調停申立前でも手続きを始められる。強制的な執行力がある
  2. 調停前の仮の処分・・離婚調停申立後~調停成立前、調停委員会が不動産の処分を防ぐことを命じる
  3. 審判前の保全処分・・離婚調停中~審判終了するまでの間の命令。保証金が必要。

FP相談の現場から

離婚に際して住宅ローン返済中(連帯保証や連帯債務)の場合は、当事者だけで決めて終えられる話ではなくなってきます。当初金融機関と交わした住宅ローンの契約が変わることなってしまうので、住宅ローンを一括返済できない場合は金融機関との調整が必須です。
配偶者に自宅(または持分)の売却をされてしまっては困りますので、早めの対応が必要です。
ご自身の判断のみで動いてしまい「ああしておけばよかった」「そんな方法があったのか」ということになっては取り返しがつきませんので、ぜひ専門家にご相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

FPあちこのアバター FPあちこ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

浜松市の独立系ファイナンシャルプランナー

保険や投資信託などの金融商品の販売はしないコンサル専業FPです。
住宅購入の際、長年税理士事務所に勤めていながら知識がないことにショックを受ける。
そんな時にFP資格に出会い、もっと知りたい!と思っているうちに独立系FPになっていました。
税理士事務所・行政書士事務所・保険代理店・金融機関での実務経験を活かした実践的コンサルをしています。

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