2022年の法律改正により、75歳以上の後期高齢者の一部で医療機関の窓口(外来)医療費自己負担割合が1割から2割に引き上げられました。ただし、軽減措置として2025年9月末までの3年間は、1ヵ月分の自己負担の増加額が最大3,000円に収まるようになっていました。
それが2025年10月1日より軽減措置がなくなり、75歳以上の後期高齢者の該当する方は原則として2割負担となりました。
厚生労働省によりますと、影響を受けるのは推計でおよそ310万人(被保険者の20%)、負担額が平均で年間9000円程度増える見込みです。
「医療費窓口負担2割」になる人
- 医療費窓口負担が「3割」になる人
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所得が145万円以上(年収343万円以上)の現役並み所得者
- 医療費窓口負担が「2割」になる人
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(1)と(2)の両方を満たす人
(1) 世帯の中に「課税所得28万円以上」の人がいる
(2) 「年金収入+その他の合計所得金額」
単身世帯の場合:200万円以上
複数世帯の場合:世帯合計320万円以上
課税所得28万円とは?
医療費窓口負担は、「住民税」の課税所得金額で判定します。
例えば、75歳単身者で年金収入のみ200万円の場合(所得控除は基礎控除のみ)

① 年金収入200万円―②公的年金控除110万円―④基礎控除43万円―⑤社会保険料約8.2万円
=⑥課税所得 約38.8万円。
「課税所得28万円以上」かつ「年金収入200万円以上」のため、このケースの方は医療費窓口負担「2割」となります。
基礎控除と社会保険料控除のほかにも、生命保険料控除や医療費控除などの所得控除額があります。
所得控除が多ければ課税所得は減り、課税所得が28万円を下回れば医療費窓口負担2割の条件から外れます
ちなみに2025年の税制改正では「所得税」の基礎控除額が引き上げられましたが、「住民税」の基礎控除額は43万円のまま改正はされませんでした。
年金収入200万円に該当する人は?
令和5年の年金受給額の月額平均額を見てみます。
国民年金のみの年金年額は100万円未満なので、「年金収入200万円」に該当するのは厚生年金のサラリーマンだった方と言えます。
サラリーマン男性の平均年金受給額
月額166,606円×12カ月=年額1,999,272円(約200万円)
サラリーマン女性の平均年金受給額
月額107,200円×12カ月=年額1,286,400円(約128万円)
厚生年金の男性の年金年収平均は約200万円、女性は約120万円です。
医療費窓口負担2割になる条件の年金年収は、単身世帯200万円以上、複数世帯320万円以上ですので、「厚生年金の男性の単身世帯」と「厚生年金の夫妻世帯」は、条件に該当する可能性が大きいです。
「医療費窓口負担2割」にならない対策はあるの?
サラリーマンの平均的な年金受給額(国民年金+厚生年金)以上の方は、「医療費窓口負担2割」になる可能性が高いわけですが、「課税所得28万円未満」であれば「医療費窓口負担2割」の条件から外れます。
扶養控除や生命保険料控除といった所得控除額が多ければ、課税所得は下がります。
しかし、75歳以上になって所得控除額を大きく増やせるものはあまりないのが現状です。
人的控除をコントロールするわけにもいかず、物的控除(特定の支出を伴う控除)を増やすと手取り額が減ってしまいます。
「医療費控除」によって課税所得が下がる可能性はあると思いますが・・
老後の年金が増えると医療費窓口負担が増える仕組みを先回りして、年金を繰上げ受給して年金額を抑えたいとご相談にお見えになるかたも増えてきました。
年金繰上げにはデメリットもありますので、特に推奨はしておりません。
過去記事もご参考にして下さい。

そもそも医療機関にお世話にならなければ医療費を負担することはないので、健康であることが一番の対策かもしれません。




