人手不足に悩まされる中、「求人の応募者数を増やすため」「従業員の定着率」をはかるため、福利厚生に力を入れる事業者が増えています。特に退職金制度の充実を検討されている事業主様も多いと思います。
今回は中小企業の退職金制度の状況についてご紹介します。
(令和8年8月5日更新)
退職制度の全体像
退職金制度は、企業独自の退職金・退職金共済・企業年金の3つに大きく分けられます。

年金制度の全体像
公的年金の上乗せとして企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。

企業年金の実施状況
2023年の調査では、従業員規模が小さいほど退職年金制度の実施割合は低く、退職一時金制度の割合が高くなっています。
また、従業員規模が100人未満の企業の約3割は「退職給制度がない」という回答結果です。
企業型確定拠出年金(企業型DC)の導入に際し、障害や実施中の問題となっている原因についてのアンケートでは、「財政負担」に次いで、「投資教育の負担」「手続き上の負担」が多くを占めています。
厚生年金適用事業所の状況
規模別の厚生年金保険適用事業所数と被保険者数の割合を見てみます。
従業員数300人未満の事業所が全体の99.4%を占め、被保険者数は54.4%を占めています。
冒頭の企業年金の実施状況にもデータが出ていましたが、従業員300人万事業所の退職年金制度をカバーすることが、全体の底上げにつながるといえます。

iDeCoプラスの取組状況
iDeCoプラスの実施事業所は右肩上がりに増加しており、2024年3月末時点のiDeCoプラス加入事業所は約7,400事業所(約47,000人)となっています(厚生労働省「DC制度の環境整備2024.7.31」P9より)
iDeCoプラス実施事業所1箇所当たりの加入者は平均6人程度です。
実施事業所のおよそ6割が加入者4人以下となっています(2023年5月現在)
2022年9月1日時点のiDeCoプラス実施事業所数


iDeCoプラスの実施事業所は右肩上がりに増加しているとはいえ、ニーズの掘り起こしがされていなかったり、他の制度が先んじて導入されていたり、そもそも運営機関の手数料収入が小さいため積極的な導入促進が行われていないようです。
その他の退職給付制度の取組状況




退職金制度に関する考察
従業員規模の大きな企業は、以前より企業年金制度が充実していました。
人手不足に悩まされる中、従業員数の少ない(300人以下)企業でも「求人の応募者数を増やすため」「従業員の定着率」をはかるため、福利厚生として退職金制度の充実の機運が高まっています。
中小企業様からの退職金制度に関するご相談も多く承っていますが、一度導入してしまうと変更したり脱退したりといったことが大変になってしまいます。
また、そもそも就業規則に退職金制度を設けていなければ退職金を支給する義務もなく、逆にどのような方法で退職金額を決めるのかも会社の自由です。
退職金制度を導入するに際して退職金規定等を作成すると、その通りに退職金を支払わなくてはなりません。
貢献度によって退職金の額を人によって変えたり、その時の会社の資金状況により退職金の金額を決めたい、とお考えの方もいらっしゃると思います。
事業主の裁量で退職金の金額を決めたり、払う・払わないを決めたい場合は、退職金制度の導入はそぐわないかもしれません。
事業主が退職金のコントロールをしたいかどうか(特に懲戒解雇の場合)が、退職金制度導入を考える大前提となります。
退職金制度導入を検討する際は、いろいろな角度からの見方、複数の選択肢からの比較をしていただき、自社にあった退職金制度を選んでいただきたいと思います。



