【中小企業の退職金制度】iDeCoプラス

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最近ではiDeCo(個人型確定拠出年金)も浸透し、老後資金の確保について意識する方が増えてきました。
今回はiDeCoに企業が上乗せして掛金を拠出できる退職金制度「iDeCoプラス」について解説します。
(令和7年1月14日更新)

目次

iDeCoプラスとは?

iDeCoプラスは、正式には「中小事業主掛金納付制度」と言います。
2018年5月に中小企業向けに「簡易型DC(簡易企業型年金)」とともに「iDeCoプラス」が創設されました。
iDeCoプラスは、企業年金を実施していない中小企業の事業主が、従業員の老後の所得確保を支援できるよう、従業員が拠出するiDeCoの掛金に上乗せして事業主が掛金を拠出する制度です。

加入条件

加入できる企業

  • 企業年金(企業型DC・確定給付企業年金・厚生年金基金)を実施していないこと。
  • 従業員数(第1号厚生年金被保険者数)が300人以下であること。
  • 事業主が複数の事業所を経営している場合、全事業所の従業員の合計が300人以下であること。

加入対象者

  • 厚生年金保険の被保険者でiDeCoに加入している人
    (令和7年税制改正で70歳未満まで拡大)
  • 労使の合意に基づき、事業主掛金を拠出されることに同意した人
  • 役員も対象になる
  • 就業規則等において、給与や退職金等の労働条件が他の職種の従業員とは別に定められている「一定の職種」の人のみを対象とすることができる。
  • 見習期間中、使用期間中は、事業主掛金の拠出対象としないことが認められる

加入に関するポイント

  • iDeCoプラスは、加入者掛金に事業主が掛金を上乗せして拠出する制度であり、事業主が運営管理機関(金融機関)と個別に契約を結ぶものではありません。
  • 従業員がそれぞれ加入しているiDeCoの運営管理機関を利用することができます。
  • 既にiDeCoに加入されている方は、掛金の納付方法を事業主払込(給与天引き)に変更する手続きが必要です。

他制度との併用

中退共や小規模企業共済との併用が可能です。
企業型確定拠出年金(企業型DC)、確定給付企業年金(企業型DB)、厚生年金基金との併用はできません。

令和6年7月31日に開催された厚生労働省「第36回 社会保障審議会企業年金・個人年金部会」において、現在は認めれらていない企業型DBとiDeCoプラスの併用を、企業型DB実施企業でもiDeCoプラスが実施可能となるよう条件の見直し検討されました。今後の動向に注目です(2024.11.19時点)

制度の中止(廃止)

労使合意により厚生年金被保険者の過半数の同意が必要です。

掛金

  • 事業主掛金と従業員掛金を合計して1カ月あたり5,000円以上62,000円以下(令和7年税制改正で上限改正)となるように1,000円単位で決定します。
  • 就業規則等により職種や勤続年数などの区分ごとに事業主掛金の額を決めることができます。
  • 事業主掛金のみの拠出はできず、従業員は最低1,000円以上iDeCo掛金を拠出する必要があります。
  • 掛金額の変更は年1回、労使合意により厚生年金被保険者の過半数の同意が必要です。
  • 休職期間中で加入者掛金の天引きができない場合、事業主掛金の拠出はできません。

掛金の税制

  • 従業員掛金は、小規模企業共済等掛金控除として全額を加入者の所得から控除できます。
    (控除処理は事業主が行うため、加入者本人の手続きは不要です。)
  • 事業主掛金は、全額を事業主の損金に算入できます。

iDeCoプラスの負担額変化

iDeCoの上乗せ掛金として支給した場合と、現金で支給した場合の負担額の変化をシミュレーションしてみました。

<例>
40歳未満の独身・基礎控除のみ
【iDeCoプラス導入】28万円の月給に1.5万円のiDeCo上乗せ掛金を支給した場合
【iDeCo個人型のみ】28万円の月給に1.5万円の現金を上乗せして支給した場合
(2024年11月現在の法令に基づき試算)

年末調整後の所得税を月額として反映しています

28万円の月給にiDeCo上乗せ掛金1.5万円を上乗せしても、従業員・事業主ともに社会保険や税の負担は増えません。
28万円の月給に現金1.5万円を上乗せすると、給与額面は29.5万円となり、従業員の社保税負担が4,067円増加、会社の社保負担が3,087円増加します。
28万円の月給に現金1.5万円を上乗せしても手取りは10,933円しか増えません。

老後資金の積み立てをするならば、iDeCoプラスにした方が効率的に資金が貯められると言えます。

運用

  • 運用商品は従業員が選択し、受け取る額は運用成績により変動します。
  • 運用商品の中には、元本が確保されないものもあります。
  • 運用中の運用益は非課税(積み立てた年金資産に対して特別法人税が課税されますが、現在課税凍結中です)

給付

  • 原則60歳まで引き出すことができません。
  • 受取は一時金・年金・一時金と年金の併用が可能です。
一時金受取

受給権が発生する年齢(原則60歳)に到達後75歳になるまでの間に一時金を受け取ることができます。
一時金受取時の税制は「退職所得控除」の対象です。

年金受取

5年以上20年以下の有期年金として受け取ります。
受給開始時期は75歳になるまでの間で選ぶことができます。
年金受取時の税制は「公的年金等控除」の対象です。

原則iDeCo加入期間は10年必要

60歳から年金資産を受け取るには、60歳までのiDeCo加入期間等(確定拠出年金の通算加入者等期間)が10年以上必要です。
通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受給可能となる年齢が繰り下げられます。

加入期間受給開始年齢
10年以上60歳
8年以上10年未満61歳
6年以上8年未満62歳
4年以上6年未満63歳
2年以上4年未満64歳
1カ月以上2年未満65歳

60歳以上で初めてiDeCoに加入した場合

60歳以上で初めてiDeCoに加入した方は、通算加入者等期間を有していなくても加入から5年を経過した日から受給できます。

障害給付金

75歳に到達する前に傷病によって一定以上の障害状態になった加入者等が、傷病が続いた状態で一定期間(1年6ヵ月)を経過した場合には、障害給付金を受給できます。

死亡一時金

加入者等が死亡した場合には、そのご遺族が死亡一時金を受給できます。

iDeCoプラスのメリット

  • 制度を利用するにあたり事業主が負担する手数料がない
  • 役員などの経営者も加入することができる
  • 事業主掛金をもらっても従業員の社会保険料負担は増加しない(事業主掛金は損金算入)
  • 個人型iDeCoは年末調整時に掛金に対する所得控除が反映されるが、iDeCoプラスは月々の給与支払時に反映される。
  • 拠出額(加入者拠出額+事業者拠出額)は事業主がまとめて年末調整時に小規模企業共済等掛金控除として計算するため、iDeCoプラスに関する年末調整は不要。
  • 運用次第で将来の給付金を増やすことができる。

iDeCoプラスのデメリット

  • iDeCoに加入していなければ利用できない
  • 社内規定の整備や給与天引きの事務負担が発生
  • 加入者の手数料負担がある(初回2,829円、月額171円+運営機関手数料)
  • 加入者掛金+事業主掛金の上限は月額62,000円(令和7年税制改正)
  • 原則60歳以降にならないと給付を受けることができない
  • 運用は加入者自身が行わなければならない(運用成績が悪くても加入者の責任)

iDeCoプラスの考察

従業員が加入者掛金として月額1,000円でもiDeCoに拠出すれば、iDeCoプラスとして事業主が掛金を上乗せしてくれるため、始めるハードルとしては高くないと思います。

令和7年税制改正でiDeCoの加入年齢が70歳未満に引き上げや掛金上限が62,000円に拡大されましたので、使い勝手はかなり良くなりました。

iDeCoが浸透してきたとはいえ制度が分かりにくいことから、事業主としてはメリットを理解してもらうことが第一のハードルかもしれません。

パートなど短時間労働者で厚生年金保険の被保険者に該当しない人はiDeCoプラスにも加入できないため、パート従業員の割合が多いと恩恵を受けることができる人は少なくなってしまうかもしれません。

事業所の状況に合わせて使い分けや他の制度との併用なども合わせてご検討下さい。

この記事を書いた人

FPあちこのアバター FPあちこ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

金融商品を販売しない独立系ファイナンシャルプランナー
中立な立場から情報提供をしています
セミナー講師・お金のセカンドオピニオン相談が専門

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