退職金にかかる優遇税制

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老後の生活資金としての意味が強い「退職金」は、通常の給与と異なり税負担が軽くなるように配慮されています。
今回は退職金の税負担が軽くなる優遇税制について解説します。
(令和7年1月14日更新)

目次

退職金の意味合い

退職金の意味合いとしては、従業員の老後の生活費の保障という意味合いが強いと思います。
他には賃金を後払いにさせてもらって資金を企業の投資にまわし、退職時に増やして渡す「後払い説」や、永年勤続にたいする「功労説」といったいろいろな考え方があります。

退職金は、長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払われるものであることなどから、退職所得控除を設けたり、他の所得と分離して課税されるなど、税負担が軽くなるよう配慮されています。

国税庁HP No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

退職金の受け取り方法2つ

退職金は2つの受け取り方法があります。

  • 一時金受取(一括受取)
  • 年金受取(分割受取り)
    企業年金やiDeCoといった退職金制度は年金受取や、一括受取との併用が可能です。
    そういった退職金制度を利用していない場合は、年金受取に対応していない場合がありますので、会社にご確認下さい。

一時金受取の場合「退職所得控除」

退職金を一時金で受け取る場合、「退職所得控除」という非課税枠があります。
退職所得控除は勤続年数によって決まり、勤続年数が長くなるほど非課税枠が大きくなります。

退職所得 =(退職金 - 退職所得控除額) ×  1/2

退職所得控除は、勤続20年までは1年あたり40万円、20年を超えると1年あたり70万円として計算されます。

勤続年数(A)退職所得控除額
20年以下40万円×A
80万円に満たない場合は80万円
20年超800万円+70万円×(A-20年)

例)勤続30年、退職金2,000万円の場合の退職所得
退職所得控除 800万円+70万円×(30年―20年)=1,500万円
退職所得 (2,000万円 – 1,500万円)×1/2 = 250万円

退職金は2,000万円ですが、退職所得250万円として税金の計算をしてくれるということです。

  • 1年に満たない月数は切り上げ
  • 障害者になったことが直接の原因で退職した場合、退職所得控除額に100万円を加えた金額となります。
  • 前年以前に退職金を受け取ったことがあるとき、または、同一年中に2か所以上から退職金を受け取るときなどは、控除額の計算が異なることがあります。

退職所得と確定申告

退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。
その際「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出する/提出しないで退職時の手取り額が変わってきます。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出する

退職所得の金額に応じた所得税・住民税が源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ありません(納税は完了)。
その年に使える所得控除が多い場合は、確定申告をすることで退職金から源泉徴収された所得税が還付される場合もあります(住民税の還付はありません)

「退職所得の受給に関する申告書」を提出しない

退職金(額面)の20.42%の所得税が源泉徴収され、退職金が支払われます。
退職所得控除が考慮されない分多く所得税が徴収されるため、自分で確定申告することで精算されます。

退職金を何回ももらう場合

以前に退職金を受け取ってから一定期間内に次の退職金を受け取っている場合には、重複期間に応じて退職所得控除は減額されます。
退職所得控除が減額されても「1/2」されますので、メリットが全くなくなるわけではありません。

確定拠出年金以外の退職金が重複する場合

確定拠出年金以外の退職金が重複する場合は「前年以前4年以内」
確定拠出年金を先に受け取り、それ以外の退職金を受け取る場合は前年以前9年以内(令和8年1月1日以後に支払いを受けた場合から適用)

確定拠出年金を一時金で受け取る場合

iDeCoや企業型DCなどの確定拠出年金を一時金として受け取る場合は「前年以前19年以内」

年金受取の場合「公的年金等控除」

iDeCoや企業年金、小規模企業共済など、老齢給付として年金受取する場合、公的年金扱いとなり優遇税制を受けることができるものがあります。
公的年金扱いになると、公的年金に該当する収入から「公的年金等控除額」を差し引いて税金の計算がされます。

65歳以上で公的年金等にかかわる雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合(令和2年分以後)
公的年金等の収入金額の合計金額公的年金等に係る雑所得の金額
110万円以下0円
110万円超330万円未満収入金額の合計額 - 110万円
330万円以上410万円未満収入金額の合計額 × 0.75 - 27万5千円
410万円以上770万円未満収入金額の合計額 × 0.85 - 68万5千円
770万円以上1,000万円未満収入金額の合計額 × 0.95 - 145万5千円
1,000万円以上収入金額の合計額 - 195万5千円
国税庁HP No.1600 公的年金等の課税関係

年金受取するメリット

  • 一時金で受け取ると老後資金を散財してしまう心配がある人は、浪費防止につながります
  • 一時金でもらうより、年金でもらった方がトータルで受取総額が上回る場合が多い(iDeCoや企業年金、小規模企業共済など)

年金受取するデメリット

  • 控除額が小さい
  • 社会保険料が増える可能性がある
  • 一時金受取は1回で課税が完結するのに対して、年金受取は受取り期間を通して課税関係が継続する

最適な退職金のもらい方とは

一時金と年金の併用受取り可能な退職金制度もあります。
一時金でもらうより、年金でもらった方がトータルで受取総額が上回る退職金制度もありますが、社会保険料や税金が増えてしまう場合もあります。
どのようなもらい方をすれば手取り額が多くなるのか、シミュレーションして検討されることをおすすめします。

この記事を書いた人

FPあちこのアバター FPあちこ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

金融商品を販売しない独立系ファイナンシャルプランナー
中立な立場から情報提供をしています
セミナー講師・お金のセカンドオピニオン相談が専門

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