【スモールビジネス・副業】白色申告はどんぶり勘定?!白色申告をざっくりと解説

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「白色はどんぶり勘定だから」とおっしゃる年配の方がよくいます。
どんぶり勘定だから楽?どんぶり勘定だから得?言っていることの意図することを考察します。
FP相談でよく受ける白色申告に関するご質問とポイントも併せてご紹介します。

「副業300万円問題」でフォーカスされたこともあって、副業を始めた方、始めようとしている方は「税務申告」は気になるところです。
「副業300万円問題」では、青色申告白色申告の線引きがされたことによって、はっきりした根拠をもってどちらかを選ばなくてはいけなくなりました。

目次

白色申告対象者は?

白色申告は、すべての納税者が対象となる基本的な確定申告のことで「青色申告」選択をしない申告のことです。
サラリーマンの医療費控除やふるさと納税、配当控除もこの白色申告で行います。

不動産所得・事業所得・山林所得のある人は、「青色申告」をしない場合には「白色申告」になります。

サラリーマンの副業は、事業的規模であるか否かによって「事業所得」か「雑所得」のどちらかになります。
事業的規模ではない副業の場合は「雑所得」となり「白色申告」になります。

青色申告を選択できる人

「青色申告」か「白色申告」の選択ができるのは事業をしている人です。

青色申告は「開業届」と「青色申告の承認申請書」を提出して、税務署の承認を得られないと青色申告事業者になれません。
言ってみれば「青色申告」は特例です。
一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については税制上の優遇を与えるというものです。
なので、これを守れない場合には青色申告が取り消しされてしまいます。

事業的規模

税制が優遇されている青色申告を選択したい方も多いと思いますが、一定の帳簿さえつけていれば青色事業者になれるわけではありません。
「事業的規模」の基準を満たしていないと青色事業者になることができません。
副業をしている方の事業的規模かどうかの基準は、2022年10月に国税庁で基準が定められました。

「事業所得」について詳しく知りたい方は、 国税庁のHPをもとに調べましたので以下をご参考にしてください。

事業所得とは?

国税庁HPでは下記のようになっています。

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。
ただし、 不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になります。

国税庁 HP No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)

さらに詳しく事業所得を定義されている例が下記です。

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得。

最高裁昭和56年4月24判決「弁護士顧問料事件」より

FXトレーダーが事業者として認められなかった(雑所得)という判例もありますので、まずは事業所得に該当するからの確認が必要ですね。

事業的規模の不動産所得とは?

国税庁のHPには

原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します

国税庁 HP No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分

とあります。
アパートなどの建物の貸付は「5棟10室基準」が有名です。
5棟10室に満たなくても事業的規模と認められた事例や、土地だけの貸付はどうなるの?といったこともありますので、詳しいことを知りたい方は税理士にご相談ください。

青色申告と白色申告の違い

青色申告と白色申告の違いは大きく2つです。

事務的な手間がかからないのは白色申告
税制メリットが高いのが青色申告

税制メリットが高い青色申告を選択するにも「事業的規模」などの要件を満たさないと青色事業者になれません。

青色申告・白色申告を検討するうえでのざっくりとした比較をしてみました。

青色申告白色申告
開業届必要どちらでもよい
税務署の承認必要必要なし
特別控除最大65万円なし
赤字の繰り越し3年間可能なし
30万円未満の減価償却資産一括経費耐用年数で経費案分
専従者に支払う給与届出書を提出し、妥当性のある金額ならば上限なし事業専従者控除として、配偶者86万円・その他の親族50万円の定額控除
家事按分業務遂行上必要と合理的に認められれば経費として計上できる条件が厳しい。業務関連の割合が「50%超」または「明確に区分できるもの」
貸倒引当金の計上できるできない
決算書損益計算書・貸借対照表
(10万円控除は損益計算書のみ)
収支内訳書
事業所得が48万円以下の場合毎年確定申告が必要専業事業者ならば48万円以下の場合は申告不要。
サラリーマンならば副業所得20万円以下の場合は申告不要
記帳の方法複式簿記簡易な記帳
必要な帳簿の数多い青色より少ない
税務調査での推計課税原則なしあり

白色申告の注意点

青色申告と白色申告の対比表の中から、FP業務をしていてよく質問を受ける項目を少しだけ詳しく解説します。

専従者に払う給与

青色申告の場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出すれば、妥当性のある金額ならば上限なく経費にできます。
白色申告の場合は親族への賃金給与は経費になりません。しかし「事業専従者控除」として支払った給与額に関係なく、一定額の控除(配偶者86万円・その他の親族50万円)が認められます。

青色申告の「青色事業専従者給与」、白色申告の「事業専従者控除」のどちらも専従者について共通することがあります。

■ 要件
 1 申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
 2 その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
 3 その年を通じて6か月を超える期間、申告者の営む事業に専ら従事していること。

■ 控除対象配偶者や扶養親族にはなれない。

たとえば、14歳の中学生の子供は専従者になれません(^^;
また、奥さんのパートかけもちについてもよく聞かれます。
「もっぱら専従していること」となっていますが、まったくダメというわけではありません。
判断が難しいところですので税理士にご相談ください。

所得税法施行令165条2
前項の場合において、同項に規定する親族につき次の各号の一に該当する者である期間があるときは、当該期間は、同項に規定する事業に専ら従事する期間に含まれないものとする。
(略)
二 他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)

国税庁HP No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

家事按分

青色申告と白色申告では家事按分として認められる範囲が違います。

青色申告:
業務上必要と判断されれば、その全てを経費とできる。

白色申告:
・家事按分の割合が限定的であること
・業務に関する割合が「50%超え」または「明確に区分できるもの」

電気料で言えば、賃貸オフィスならば明確に区分できているので経費になりますが、自宅オフィスの場合は家事用より事業で使っている割合が多くなければ経費として認められません。

「白色の方がどんぶり勘定だから家事費を多く経費にできる」
とおっしゃる年配の方がよくいらっしゃいます。
あらためて確認すると、どう考えても白色申告では経費として認められる額は青色より少ないことが分かります。
専従者に支払う給料にしても同様です。

所得税法施行令第96条 家事関連費

【家事按分】国税庁HP 法令解釈通達より

帳簿の記帳と保存

平成25年以前は、事業所得等300万円以下の白色申告者の記帳義務は免除されていましたが、平成26年以降すべての事業者について記帳義務が課されることになりました。

しかし、青色申告者の帳簿義務に比べると簡易な方法が認められています。

・複式簿記でなくてもいい
・一日単位の集計でもいい など

領収書やレシート、請求書、納品書などの業務に関する書類の整備は青色申告者と同様に必要です。
(税務調査の際に証拠を提示するため)

白色申告者に義務付けられている帳簿と書類の保存期間は下記の通りです。

「白色はどんぶり勘定だから」と言われるポイントはこの「帳簿」と思われます。
以前は事業所得等300万円以下の白色申告者の記帳義務は免除されていたことで、「あいまい」「てきとう」とされていたフシがあります。
記帳義務がなかったからといって、根拠なく経費計上していいわけではありません。

「65万円特別控除を利用するために手間のかかる青色申告するよりも、どんぶり勘定の白色申告の方が特別控除以上の経費を計上できる」
とうトンデモ理論を過去におっしゃっていた方がいました(^^;

都合のいい「どんぶり勘定白色申告」の恐るべきリスクは次項目の「推計課税」にあります。

推計課税

白色申告の場合、帳簿がなかったり、の誤りや漏れが多かったり、税務調査に非協力的であったりすると、税務署が所得を推計して課税することがあります。

推計課税とは、所得の更正や決定をする際、同業他社の比較、損益・資産状況、人数や生活状況などから「推計」して所得を決定する課税方法です。

「税務署に税額を決めてもらう」ということになります。
根拠となるきちっとした帳簿や書類が提示できない分、仕方がないということになってしまいます。

青色申告の場合は、税務調査の際に推計課税が行われることはありません。(隠ぺい・仮装などの悪質な場合は青色取り消しで推計課税される可能性もあり)

「推計課税」について

1  所得税及び法人税における推計課税とは、税務署長が更正又は決定をするに当たって、直接資料によらず、各種の間接的な資料に基づいて推計により所得金額を認定する方法をいう。
本来所得税及び法人税は、納税義務者の申告により実額に基づき課税標準及び税額等が確定するものであるが、納税者の帳簿書類の不存在又は記帳の不備、税務調査に対する非協力等によって実額が把握し得ない場合、課税庁は所得金額を推計し、更正又は決定せざるを得ないこととなる。この場合、課税を放棄することは、租税の公平負担の観点から許されない。ゆえに、ここに推計課税の認められる根拠があると解されている。

国税庁HP 推計課税訴訟における民訴法第312条の文書提出義務について

所得税法第156条 推計による更正又は決定
税務署長は、居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合には、その者の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額(その者の提出した青色申告書に係る年分の不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額並びにこれらの金額の計算上生じた損失の金額を除く。)を推計して、これをすることができる。

FPとしての感想

平成26年から所得の多寡にかかわらず白色申告者も帳簿の記帳・保存が義務付けられたことで、白色申告のメリットはかなり少なくなりました。
年配の方が言う「白色申告はどんぶり勘定」は「帳簿の義務」のことだと思った方がスジが通ります。
「白色申告=経費を多く計上できる」のは完全な間違いです。

青色申告は税制メリットは大きいですが、事務的な手間も大きいです。
所得が基礎控除48万円を下回っても毎年申告が必要です。

そもそも青色申告は事業的規模で事業をしている方が使える制度です。

事務的な要件を課すことで帳簿や申告が面倒くさいからしたくない=本気で事業をするつもりでない

としてふるいにかけているのかもしれません(^^;

青色申告と白色申告を選択する基準は「事業の本気度」かもしれません。

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私は日商簿記1級とFP1級を持っているおかげで、そういったことに困ったことがまったくありません。
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この記事を書いた人

FPあちこのアバター FPあちこ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

浜松市の独立系ファイナンシャルプランナー

保険や投資信託などの金融商品の販売はしないコンサル専業FPです。
住宅購入の際、長年税理士事務所に勤めていながら知識がないことにショックを受ける。
そんな時にFP資格に出会い、もっと知りたい!と思っているうちに独立系FPになっていました。
税理士事務所・行政書士事務所・保険代理店・金融機関での実務経験を活かした実践的コンサルをしています。

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