在学中の子ども(20歳以上)の国民年金保険料を親が負担しているご家庭も多いと思います。
「親が払っている子どもの国民年金保険料は年末調整で使えるの?」
といったご質問を多くいただきます。
「専業主婦の奥さんが契約者の生命保険、同居の親の医療費など年末調整・確定申告で控除できるの?」
といった質問も通年を通して多くいただきます。
今回は年末調整・確定申告で所得控除できるもの/できないものについて解説いたします。
〔このコラムは令和4年10月現在の法令に基づいております〕
iDeCo(個人型確定拠出年金)
2017年から専業主婦(夫)もiDeCoに加入できるようになりました。
しかし専業主婦(夫)にとってiDeCoはあまり節税メリットはありません。
サラリーマンをいったん退職して専業主婦(夫)としてiDeCoの拠出を続けている方もいらっしゃいます。
専業主婦(夫)のiDeCoの掛金は、専業主婦(夫)ご本人名義の口座から引き落としされています。
しかし収入がないので、実質的に掛金は「家計費」または「貯蓄」から支払っていることになります。
広い意味で考えると「配偶者の収入」から負担しているともいえますね。
サラリーマンのご主人から「専業主婦である妻のiDeCo掛金は、自分の年末調整で控除できるの?」
というご質問を多くいただきますが、答えはNOです。
iDeCoの掛金は加入者本人の掛金しか年末調整・確定申告で控除ができません。
国民年金の第3号被保険者の方の掛金の納付方法は、「個人払込」(本人名義の預金口座からの引落し)に限定されており、配偶者の方が支払うことはできません。iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」の対象となりますが、加入者本人の掛金しか所得控除の対象となりません。
iDeCo公式サイト「よくある質問 専業主婦(夫)の掛金を配偶者がまとめて支払うことができますか?」より
小規模企業共済
個人事業主や法人の役員の方は小規模企業共済に加入している方も多くいらっしゃいます。
経営者の退職金ともいえるもので、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営しています。
個人事業主は、事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)も加入資格があるので、専従者である妻なども小規模企業共済に加入している場合も多いです。
所得の少ない専従者の小規模企業共済掛金も事業主の確定申告で控除できる?
という質問をいただくことがありますが、答えはNOです。
上記のiDeCo同様に、小規模企業共済等掛金控除というくくりに入り、加入者本人の掛金しか所得控除の対象となりません。
「心身障害者扶養共済制度」の掛金も同様に加入者本人の掛金しか所得控除の対象となりません。
国税庁 No.1135 小規模企業共済等掛金控除
国民年金保険料・国民年金基金の掛金
在学中の子ども(20歳以上)の国民年金保険料を親が負担している場合にとても多いご質問です。
生計を一にしている親族の国民年金保険料を払った場合は、年末調整・確定申告で控除できます。
奥さんの国民年金基金を夫が払っている場合も同様にOKです。
健康保険料
・健康保険料
・国民健康保険料
・後期高齢者医療保険料
・介護保険料 など
注意点として、年金から引き落としされている国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料などは、本人でしか所得控除とすることはできません。
生命保険料
契約者が家族でも、保険料を支払っている方の年末調整・確定申告で控除できます。
所得税法第76条第1項、第5項、第6項
注意点
・個人年金保険料は本人または配偶者のみ。
・保険料を負担していることを証明する資料の提出が必要な場合もある(保険料振替口座の通帳など)
・将来誰が保険金を受け取るかによって、贈与税または一時所得となる。
国税庁HP No.1140 生命保険料控除「妻が契約者の生命保険料」
国税庁HP「妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除」
医療費
家族の医療費も生計を一にする場合は医療費控除をすることができます。
所得税法第73条第1項
医療費控除の対象となる医療費の要件
国税庁HP No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
(1)納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること。
(2)その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること(未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となります。)。
生計を一にするとは
別居の場合:
単身赴任・進学・年収が少ない別居の親など。
常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている。
同居の場合:
明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合はNG。
所得税基本通達2-47
国税庁HP「No.1180 扶養控除「生計を一にする」の意義」
国税庁HP「同居していない母親の医療費を子供が負担した場合」
親族とは?
6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族です。
民法第725条
医療費控除は、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合に適用されることとされています(所得税法第73条第1項)。
国税庁HP「姉の子供の医療費を支払った場合」より
この場合の「親族」とは、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族をいいます(民法第725条)。
過去の所得控除をやり直したい時は?
知っていれば所得控除ができたのに・・
という方は、過去の分をやり直しができる可能性があります。
年末調整で完結したサラリーマンの方は、5年前までの分を「還付申告」できます。
確定申告をした方は、法定申告期限から5年以内に「更生の請求」をし、その請求内容が正当と認められたときは納め過ぎの税金が還付されます。
国税庁HP「No.2030 還付申告」
国税庁HP「申告が間違っていた場合 Q21 確定申告の内容が間違っていた場合、どのような手続をすればよいのでしょうか」
更生の請求書は、国税庁の確定申告書等作成コーナーから作成できます。
確定申告書等作成コーナー/e-Tax(国税電子申告・納税システム)
ご自身で「還付申告」や「更正の請求」をするのが難しい時は、税理士に頼んでみてもいいでしょう。
税理士に払う報酬より還付される税金の額が多ければラッキーですよね。
自分でパパッと書ける確定申告 令和5年3月15日締切分